
RFD
通常価格
¥29,400
販売中
※5/9〜 発売分のRFDの発送は5/27-29を予定しております。製作にお時間いただきますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
RFD (Rather Fiðla Drive) : "寧ろヴァイオリンドライブ"
2025年、Roger EVRを開発する過程にてPower Amplifier ICの活用方法について、どうしても別路線で試したいことがありました。それは自分が歪みのエフェクター設計において長年1番の可能性を感じているMOSFET(2013年リリースの9/9(多段D-MOSFET回路など)との組み合わせでした。
MOSFET : (Metal-Oxide-Semiconductor FET)と呼ばれる素子は、1960年頃より登場し始め、もはや真空管の代替ソリューションの一つという範囲のみではなく、我々の現代の生活において、あらゆる製品の電子回路の中に大量に使用されています。高電圧動作、低消費電力、高速スイッチング特性、コンパクトサイズ化などあらゆるメリットがこの素子には含まれており、その形式もこの60年以上の歴史の中で、Lateral/Vertical(横型/縦型)構造、Depletion/Enhancement(ディプリーション/エンハンスメント)モード、Power MOSFET、デュアルゲートMOSFET....あらゆる形式やフォーマットが存在するのですが、特にエフェクターとして活用された例は実はいまだに非常に少ないのです。
2025年現在では"MOSFET"というとその多くが、一般的なオペアンプによる増幅回路の対してのクリッピングで使用されるようなケースの使用方法がエフェクターの中では大半です。ただし、それらは自分の求めるようなMOSFET本来のポテンシャルが発揮されることはなく、実際は純粋にMOSFETのみのディスクリート構成にて、(特に、と言うかほぼ一意的に)慎重にバイアス方法を検討することと合わせることで、ピックのアタックに対しての形容のし難い、心地の良いチューブライクなコンプレッション感、特に2次、3次倍音が理想的な比率で強調された(ただし倍音特性に対しては、モード、バイアス、素子の選択によって大きく変わります)ヴァイオリンライクでずっと奏でていたいような艶感と官能的なサステイン.... といった要素が明らかに実現されることを長期的な探究によって実感していました。
全く同じようなゴールを持った違う方法論として、"Power ICの活用"というものがありますが、こちらはRoger EVRにて完全化されました。自分の研究では現状、あらゆるMOSFETの活用法よりもPower ICでの歪ませ方の方が、アタックの(ms)と言える瞬間以降のサステインの官能性とサチュレーション感に有利です。
つまり、RFDでは、MOSFETいくつかによって生み出される複雑なコンプレックスな倍音特性と、どこまでも心地の良いピックアタックに対するコンプレッションを。そして、後段となるPower ICからは艶のあるサステインとギターのボリュームに対する完全な反応性(これはMOSFETのセクションも同様です)を組み合わせることで、いわゆる"Violin Tone"と呼ばれるあの、ずっと聴いていられる(弾いていられる)ような官能性を生み出す、という点をかなり強い意志を持ったプロジェクトとして進められました。
Roger(EVR), 11/11(EVR)で使用したJRC2073(or M2073)のPower Amplifier ICは、豊富で非常に図太いミドルを備えた素材でしたが、今回は初めてTDA2822LというPower Amplifier ICを使用しています。サウンドとしてはより繊細で、よりハイミッドも備え、ローゲインサウンドでの活用にて真価を発揮するものです。同じように、星の数ほどあるMOSFETですが今回は、Enhancement Modeのものより(MOSFETのほとんどがこちらになります)、同じように繊細で、グラッシーな艶感を備えているようなものをいくつか組み合わせました。それらの全てが、エフェクターデザインで用いられたことはおそらく無く、設計の初期段階より非常にユニークなサウンドとなっていました。
最初にRogerを設計したコンセプトと同じように、非常コンセプチュアルな今回のモデルですが、同時期に設計をしていたRoger EVRでの知見を活かした必要最低限のトーンシェイピングの"Treble"と、サウンドに対しての可変性の高い"Low-Cut"(ストーリーはこちらをご覧ください)を2つのEQとして備えています。
"Vol"はRoger(EVR)と同じようなディスクリート構成(Power ICをそのように見立てることが可能)由来の広い可変域のため、非常に多くのブーストが可能です。"Gain"は、0の段階からすでにローゲインのODの範囲と言えるようなスムースなコンプレッション感と、ミドルの艶感を持ちます。時計回りに回していくことで本機のコンセプトである"Violin Tone"と感ずるような、ゲイン、サチュレーション感が付加されていきます。別の言い方で、Roger(EVR)がOD/DSの中でもどちらかと言うと、DS(ディストーション)のような雰囲気が強かったものを、対となるようなOD(オーバードライブ)と言うことも可能です。非常に似通った、ギターのボリュームに対しての高い反応性もそれを裏付けています。
本機がリリースするまでは、Leqtique EVRとしてオリジナルLeqtiqueのエフェクターをEVRフォーマットにてリファインする。という機種のみでしたが、今後展開されていくLeqtique EVRのエフェクターではまた、全く今までには無い新機軸・コンセプトを大量に提示していく予定です。後から振り返るとその橋渡しとなるような、従来のLeqtiqueエフェクターの強みや共通するトーン、そして今後の根幹となるコンセプトの一つである"MOSFETの最大活用"これらを一つに纏め上げたそんな一台です。
難しい文面が多くなってしまいましたが、それらを考えず直感でどのコントロール位置でも、"あー、この心地よい感じか..."そう思っていただける感覚がこのボックスに内包されていると確信しています。MOSFET/Power ICのマジックを体感したい方はもちろん、何より引いているプレイヤー自身が心地よくなれるような、そんなローゲイン〜ミディアムゲインのOver Driveをお探しの方に絶対に手に取っていただきたい一台です。
Control : (Left to Right) Volume , Low-Cut(mini) , Tone , Gain
Operation Voltage : 9V (NO 18V)
Shun Nokina
"EVR" コンセプトについて
2019年以降はヨーロッパを拠点としていくつかのペダルのデザインには携わらせて来ておりましたが、Leqtiqueのペダルについては新作をリリースすることもなく実質的には休止状態になっておりました。しかしながら、2024年拠点を一時的にアイスランドとしたことで素晴らしいインスピレーションを複数得ることができ、その全てを"EVR"というアップデートパッケージとしてデザインし続けて参りました。
"EVR"とは、アイスランド語でEVRU:ヨーロッパを意味します。長年、通いや拠点としてヨーロッパ各地で得たインスピレーションや経験をフィードバックして体現していくことを文字に強く込めています。塗装の色彩感や、サウンドのダークさなど元々、強くヨーロッパへの憧れが体現されていたLeqtiqueのペダルですが、より現実的な経験としてはっきり体現されています。
15年間アップデートの入ることのなかった、Leqtiqueのペダルですが筐体、全てのコンポーネンツ、コンセプトなど一から全て再構成をしました。例えばアルミニウム削り出しの一体型であった筐体は、許容力の広い一般的な"箱"のデザインでしか今まではありませんでしたが、完全にLeqtique EVRのペダルでしか活用できないような特別な設計としてあります。"一体型"であることの優位性を考え直すことで、アルミニウムのみであった素材は、今回アルミニウムの機能的なベースケースと、非磁性のステンレスを使用したコスメティックなレイヤー、また個別で切削されたパーツの3セクションに分割し、統合することで構築されており、"削り出し筐体"のデザイン面での多様性と一貫性、マテリアルチョイスの制限性に逆説的に大きくメスを入れました。結果として、アクリル塗料により塗装されていたケースの大部分はアルミニウムの陽極酸化処理として置き換えられ、今までと比較にならない耐久性を得ることができ、上部レイヤーをステンレス素材をにすることでペダル全体の剛性感は格段に向上し、コスメティックな観点でもステンレスの輝きはハンドペイントに今までには無い奥深い立体感を付与しまいます。また、多軸のCNCマシンでも制作の難しいアイデアについては、個別でパーツを作成し統合することで解決しており、特にチームでは"Slider"と呼んでいる内部の部品は、ペダルコンセプトとは別色で敢えて制作されており、ブランド初期より長らく使用し続けているGavitt製のクロスワイヤーを個別でシールドするのと、Leqtiqueらしいすっきりとした配線を2次元から3次元的に昇華しています。
他方、電源セクションはペダルの基幹的なデザインの中で間違いなく一番重要なポイントですが、リーディングブランドであるKeystone社の電池スナップを長年活用させていただいておりましたが、最高品位なものが廃盤となり自分としてはこの部分に対して一番頭を抱えておりました.... しかし、EVRコンセプトしてすべてを一から再構築する際に、経年によってワイヤーが切れる可能性のあるスナップではなく、電池自体をセクションとしてマウントしたい。という理想を今回具現化しました。Keystone社の"Model 91"はビンテージタイプから素材やデザインはさほど変わっておらず、9Vの角電池を強力にホールドして強いパワーシグナルをアウトプットするという意味では、個別で設計されたVPTP基板と合わせて、オリジナルLeqtiqueペダルのフォーマットからは遥かに高次元な進化を遂げました。
こういった全てのアップデートの大半は、"ペダル内部"に関するものが多く、前述の高品位なパーツ群といった話も含めて、実は演奏して実際にペダルを楽しんでいる際には気に留められることがほぼ無い部分なのですが、そこに"なぜ?"という問いも今回のアップデートパッケージの原動力の大きなテーマの一つでありました。自分なりの答えとして、"裏蓋から内部へのアクセスの悪さ"が大きな要因の一つであると考え、裏蓋と固定構造についてもかなり長い時間考察と設計を続けました。最終的に、UKで製造されるカーボンファイバーで強化されたポリアミドの小さなノブ2つで固定することのできる構造へと、トラディショナルな4点プラスねじ止め構造から発展させました。こちらの小さなノブは親指で締めたり、緩めたりが可能なトルク感を持っておりますが、内部にアクセスする機会の少ない場合はスリットが、各国の硬貨やピックの挟まるサイズ感にしてありますのでそちらで増し締めしていただけたらと思います。
今までで一番ペダル内部に開閉しやすいデザイン。というのが、ペダル内部にひたすら拘り続けた自分からの最終的な回答です。今後のLeqtiqueペダルの新作や、過去作のアップデートには内部トリマーetc...など多く含んで参りますのでこのアップデートは間違いなく大きな意味を持ってくると思います。また、強いメッセージとして"時々ペダルの内部も開けてみてください。間違いなくこのペダルをさらに愛せるでしょう。"というものもあります。世界各地から集められたカスタム品や、シークレットパーツ達それぞれにストーリーがあるのです..... (後記ブログにて詳しく