
Roger EVR
通常価格
¥29,400
販売中
※5/9〜 発売分のRoger EVRの発送は5/27-29を予定しております。製作にお時間いただきますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
2017年にリリースいたしました、Leqtique - Rogerは非常にコンセプチュアルなモデルで、純粋にPower Amplifier ICのみで歪ませ、チューブライクなコンプレションや、艶感のあるピュアなサウンドを出力することに全ての重きを置いていました。必要最低限なフィルタリングにとどめられたトーンシェイピングは、結果的に図太いミドル〜ローエンドを備えたファットでパワフルなOD/DSとして仕上がっていました。
その後、L'ブランドよりL'Rogerをリリースすることになるのですが、その際のアップデートとしてはよりそのコンセプトを、各シチュエーションに柔軟に対応できるようなフォーマットに落とし込むことでした。その場合明らかに追加すべくは、Low-Cutでそれも例えばSND - Redemptionistのようにバッサリと広い範囲のローを歪みセクションの前でカットする方法ではなく、MAT EVRのような、歪みセクションの中で一定のローエンドとゲインに影響を及ぼすような方法を、Power ICに応用するような形で採用しています。結果として4つ目のノブとして追加されたLow-CutはTimbre(音色の特性)にも作用するような、必要不可欠なものとなりました。
私感では、L'ブランドのエフェクターラインナップでは特にL'MATとL'Rogerを支持していただいているような感覚があり、そのミソはやはりLow-Cutにあるのでは.... と長らく感じておりました。今回EVR化するにあたり、L'Rogerをベースとして、オリジナルLeqtiqueよりもタイトなローミッド〜ローエンドの基本となるサウンドの質感を重視し、同様のLow-Cutコントロールを搭載しつつ、強力に図太いミドルに関してはオリジナルLeqtique - Rogerのサウンドを継承することにしました。
そういった形で本来であればもっと早く完成したはずのRoger EVRなのですが、たまたま可変電圧で最終テストをしていた際に、やはりPower ICのさらなるポテンシャルを強く感じ、 再設計をし上記の内容は全て変えずに、内部に5つ目のコントロールとして"Dynamics"を追加することにしました。こちらは、本来であれば9V駆動のRogerシリーズを7-14Vの範囲で駆動電圧を可変できるような昇降圧回路を追加してあります。通常のオペアンプを使用した数多くの一般的な歪みエフェクターでダイレクトにヘッドルームや、ダイナミクスが駆動電圧によって変更されることは少なく(Leqtiqueのラインナップですと、MAR,MAT,Red,Roch,Berylなど)、実際にはそれらは外付けされたダイオード/LEDでのクリッピングの支配性が強く、サウンドの解像度のみが可変されるという事を体感された方は多いかと思います。Power IC、CMOS Inverter、FET、MOSFET...などで組まれた回路のほとんどではそれとは逆に、ダイナミクスやヘッドルーム、コンプレションに直接的に影響します。
内部の"Dynamics"コントロールを時計回りに回すほど、コンプレションは下がり、よりダイナミックでオープンなサウンドに。反時計回りに回すことでより内部で飽和的になり、コンプレッションの強いスムースなサウンドとなります。例えば"Dynamics"を低く設定して(反時計回し方向)、Low-Cutもあまりしないことで(反時計回し方向)、スムースでより官能的なサステインを持ったリードマシーンに。逆に"Dynamics"を高く設定して(時計回し方向)、積極的にLow-Cutを使うことで(時計回し方向)、軽快なカッティングワークに最適となります。
Rogerのコンセプトであった"Power ICの純粋な活用"というコンセプトは、それを限界まで発展させることで完成された11/11(EVR)、また違う素子とのコンビネーションで生み出されたRFDなど、広い形でLeqtique(EVR)のラインナップに影響することになりました。オリジナルコンセプト機であるRogerの完成形であるRoger EVRにて、それらの血統の原点をお楽しみください。そしてまた、11/11(EVR) : 多段Power IC , RFD : MOSFET+Power ICの親戚たちと比較して頂くことで、より"チューブライクなエフェクター"への理解を深めて頂き、各々の至高の歪みサウンドに近付いていただけましたら、設計者冥利に尽きるというものです。
(なお、"Dynamics"の近くにあるミニスライドスイッチを使用することで、駆動電圧を変更する回路を完全にバイパスすることが可能で、こちらは特に9V電池を使用した際には"Dynamics"を活用しようとすると、昇圧回路によって高い消費電流で消耗が激しくなるため、ご使用いただくことを推奨いたします。)
Shun Nokina
"EVR" コンセプトについて
2019年以降はヨーロッパを拠点としていくつかのペダルのデザインには携わらせて来ておりましたが、Leqtiqueのペダルについては新作をリリースすることもなく実質的には休止状態になっておりました。しかしながら、2024年拠点を一時的にアイスランドとしたことで素晴らしいインスピレーションを複数得ることができ、その全てを"EVR"というアップデートパッケージとしてデザインし続けて参りました。
"EVR"とは、アイスランド語でEVRU:ヨーロッパを意味します。長年、通いや拠点としてヨーロッパ各地で得たインスピレーションや経験をフィードバックして体現していくことを文字に強く込めています。塗装の色彩感や、サウンドのダークさなど元々、強くヨーロッパへの憧れが体現されていたLeqtiqueのペダルですが、より現実的な経験としてはっきり体現されています。
15年間アップデートの入ることのなかった、Leqtiqueのペダルですが筐体、全てのコンポーネンツ、コンセプトなど一から全て再構成をしました。例えばアルミニウム削り出しの一体型であった筐体は、許容力の広い一般的な"箱"のデザインでしか今まではありませんでしたが、完全にLeqtique EVRのペダルでしか活用できないような特別な設計としてあります。"一体型"であることの優位性を考え直すことで、アルミニウムのみであった素材は、今回アルミニウムの機能的なベースケースと、非磁性のステンレスを使用したコスメティックなレイヤー、また個別で切削されたパーツの3セクションに分割し、統合することで構築されており、"削り出し筐体"のデザイン面での多様性と一貫性、マテリアルチョイスの制限性に逆説的に大きくメスを入れました。結果として、アクリル塗料により塗装されていたケースの大部分はアルミニウムの陽極酸化処理として置き換えられ、今までと比較にならない耐久性を得ることができ、上部レイヤーをステンレス素材をにすることでペダル全体の剛性感は格段に向上し、コスメティックな観点でもステンレスの輝きはハンドペイントに今までには無い奥深い立体感を付与しまいます。また、多軸のCNCマシンでも制作の難しいアイデアについては、個別でパーツを作成し統合することで解決しており、特にチームでは"Slider"と呼んでいる内部の部品は、ペダルコンセプトとは別色で敢えて制作されており、ブランド初期より長らく使用し続けているGavitt製のクロスワイヤーを個別でシールドするのと、Leqtiqueらしいすっきりとした配線を2次元から3次元的に昇華しています。
他方、電源セクションはペダルの基幹的なデザインの中で間違いなく一番重要なポイントですが、リーディングブランドであるKeystone社の電池スナップを長年活用させていただいておりましたが、最高品位なものが廃盤となり自分としてはこの部分に対して一番頭を抱えておりました.... しかし、EVRコンセプトしてすべてを一から再構築する際に、経年によってワイヤーが切れる可能性のあるスナップではなく、電池自体をセクションとしてマウントしたい。という理想を今回具現化しました。Keystone社の"Model 91"はビンテージタイプから素材やデザインはさほど変わっておらず、9Vの角電池を強力にホールドして強いパワーシグナルをアウトプットするという意味では、個別で設計されたVPTP基板と合わせて、オリジナルLeqtiqueペダルのフォーマットからは遥かに高次元な進化を遂げました。
こういった全てのアップデートの大半は、"ペダル内部"に関するものが多く、前述の高品位なパーツ群といった話も含めて、実は演奏して実際にペダルを楽しんでいる際には気に留められることがほぼ無い部分なのですが、そこに"なぜ?"という問いも今回のアップデートパッケージの原動力の大きなテーマの一つでありました。自分なりの答えとして、"裏蓋から内部へのアクセスの悪さ"が大きな要因の一つであると考え、裏蓋と固定構造についてもかなり長い時間考察と設計を続けました。最終的に、UKで製造されるカーボンファイバーで強化されたポリアミドの小さなノブ2つで固定することのできる構造へと、トラディショナルな4点プラスねじ止め構造から発展させました。こちらの小さなノブは親指で締めたり、緩めたりが可能なトルク感を持っておりますが、内部にアクセスする機会の少ない場合はスリットが、各国の硬貨やピックの挟まるサイズ感にしてありますのでそちらで増し締めしていただけたらと思います。
今までで一番ペダル内部に開閉しやすいデザイン。というのが、ペダル内部にひたすら拘り続けた自分からの最終的な回答です。今後のLeqtiqueペダルの新作や、過去作のアップデートには内部トリマーetc...など多く含んで参りますのでこのアップデートは間違いなく大きな意味を持ってくると思います。また、強いメッセージとして"時々ペダルの内部も開けてみてください。間違いなくこのペダルをさらに愛せるでしょう。"というものもあります。世界各地から集められたカスタム品や、シークレットパーツ達それぞれにストーリーがあるのです..... (後記ブログにて詳しく
※Leqtique オリジナル Roger 説明書
