#3-3 "EVR 製作ツール pt.1-Fin"
....さて4/26にお届けの予定でしたが気づけばもうこんなに。ブログの内容とは全く関係ないのだが、ここ1ヶ月ほどは信じられないほど(自分的には)良質なアイデアが複数、しかも多角的に湧き上がってきてしまったことで、その具現化に猛進しているところである。きっと、数ヶ月後にはLeqtique EVRは全く別のものになってしまうのではないか。と思う反面、所詮は自分のデザインでしかないので方向性や空気感はやはり"それっぽい"とは思う。。。いずれにせよ、完全にゾーンに入ってしまっていて家の鍵や、財布を見つけるのに毎日20分くらいかかる始末であるとか、カップ麺のお湯を2回入れてしまうとか言えば間違いなく伝わるであろう.....
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ということで、ツール編も一先ずファイナル。ほんっとにひとまずでしかないほど奥が深すぎるのだが、正直4月の製作で学習したことや、新たに得た質感が多すぎたのでこのpt.3を記すことにする。
まず、新機軸はPB Swiss Toolsの505 Lのツールホルダー/オーガナイザーである。
こちらは10年以上前から持ってはいたのだが、木ねじを打つなんてとんでもない!というようなテーブルを作業に使用することが多かったためお蔵入りしていた。だが、考え方も本当に変化するもので、今の自分のブームは柔らかい白っぽい木のテーブル。である。超極論バルサ材みたいなものでもいいと思う。筐体にダメージもなく、どんな色の部品でもとにかく見つけやすいのだ。エキゾチックウッドの一枚板みたいな"イケてる"感は皆無なのだが、もうそういうのはいいかな。。と思ったり。木材の話はまたすぐに脱線しそうなのでこの辺に笑
こちらのツールホルダーはとにかく凄い!!!!!Ideal-tekの1本2-3万レンジのツールたちをこのように下向きにして入れても、全く問題がないと信頼できるほどのホールド力なのである。ちなみにこれはたまったまなのだがES542TXなどのサイズに対しては、ホルダーの中空部分がピッタリハマるのも追加のセキュリティーといった感じである。これはただのスイスマジック。
(専用設計、なわけはないんだが。。笑)
さて耐久性チェック中(https://leqtique.ch/blogs/evr-blog/3-evr-tool-2)のES542TXであったが、10日もしないうちにこうなってしまった。
理由は単純、CU1.0mmのラインがやはりシビアなのである。CU1.5mmくらいのものを3回くらいカットしたら、バッチン。。。。。 タングステンカーバイドの刃を折る。という行為ほどタイムマシンでやり直したくなる行為は現状自分の人生にはないかもしれない。。
ということで注意喚起と戒めとしてしっかり記載するが、タングステンカーバイド素材を超硬質(piano線など)の極細ワイヤーをカットする用途以外でエフェクタービルドで使う際の、最大の利点は、耐薬品性、対摩耗性、対酸化性であろう。これらは確かに基本的な鋼もののニッパーでは絶対に味わえないような安定っぷりである。
しかし、超硬質すぎるゆえか、原子構造的なものなのか、限界を超えたカットに対する許容力がほぼ0である。超ピーキーなのだ。たとえば電子部品で言えば、CC抵抗に似ているかもしれない。ある定格ラインを超えると、ファっ!と消失して黒いすすが舞うといったことを経験したことある方もいるだろう。金属皮膜抵抗は逆に定格を大きく超えて"粘って"しまう。だからこそ、昔のテレビを分解すると必ずや大きなCC抵抗が電源ラインに一本鎮座していたものである。CC抵抗のロマンの深さについてはまたいずれじっくりと。
とにかくCU1.0mmまでにしよう。エフェクター部品でメイン基板を作るときにそれを超えることなんてほとんどないだろう。一部の大きな部品たちのカットは、ES5160L,61L,62Lの3本のシリーズが極めてオススメである。
(My Ideal-tek collection for Leqtique EVR 2025 Q2)
定格さえ守れば、もう間違いなくこのニッパーに肩を並べるものは世界中探しても存在しない。はっきり断言する。いうまでもなくIdeal-tekの回し者ではないが、シリアスなペダルビルドを目指す場合(たとえば超精密なPtoP基板作りなど)には絶対に導入した方がいい。
さてこれを書いている途中にも、ピンポーンと鳴ってこんな有様である。
結局スイスのツールのこの血統は全て、PB Swiss Tools社の歴史とレジェンダリーなデザインのあれこれに起因するのであろう。。。このブランドのツールの"完全性"は本当に異常なものがある。自分の血となり肉となりすぎているため、普通とか普遍とかそんな言葉にどうしてもなっているのだが、まだ触れられたことのない方にはぜひどんなタイプでもいいので、PB Swiss Tools社の何か製品をトライされることを強くお勧めする。
シェイプ、カラー、質感.... あらゆることに感心してインスピレーションを感ずることだろうと思います。少なくともLeqtique(EVR)が理想としてそうなモノを全部持ったプロダクト達です。
今現状でLeqtique EVRの日本チームでは、すべての工具がスイス製で(というかPB Swiss ToolsとIdeal-tekのみ)ざっくり20ー30本程度あるが、いずれは壁一面100-200本くらいセットしたいものだ。。。あらゆるエフェクター工房には自他社のクールなペダルコレクションが多数置かれていることと思うが、何を隠そううちの工房には今も過去も基本的に自他社共にペダルは一つもない(笑)。あってもDitto(TC Electronics)くらいだろうか。
なぜなら自分の感覚では、工房って音を決める場所では決してない。一つの決められた作品をいかに集中して、複数高い再現性で製作していけるか、という聖域なのである。たしかにパーツチョイスーや、回路設計ーや、サウンド比較ーなどがエフェクター作りのメインかもしれない。だが、決められたマニュアル通りの機械的な量産。なんてものには今は全く興味がなくて(それに美しさを感じた時期も確かにあったが)、拘り抜いた信頼できる道具達で、一つづつの動作の意味合いを感じ取りながら組んでいきたいと思っている。
製作チームに新しい仲間が加わったりしてきているのだが、だいたい皆最後の"組み付け"が楽しいといってくれる。それはそのあとサウンドが出る段階に来ての喜び、といった理由よりもヤバい工具達を一番多種使うその時間に魅了されていることに多分本人は気づいていない。かくいう自分も完全には気づけていないのかも。。。。
Antonio StradivariやNicolo Amatiのワークは常に自分のモノづくりでのインスピレーションなのだが、もちろん博物館で距離をとってでしかその息吹を感じることができない。ただし、クレモナの街を歩いているといまだに点在するバイオリン工房の空気感がそれはそれは、それはとんでもなくて。
天井や、壁にずらっと並べられた工具達、どれもこれも工具自体が自分の手に合うような調整(カスタム)をされた雰囲気である。そこにモダニティはほぼ存在しない。だがあのキシキシ言うような朽ちたウッドフロアや、メイプル(スプルース?)の削られた端材の山、雑多に置かれた赤ワインの残り瓶......
それらはピュアなモノづくりに対する献身の結果なのだと、これまた雑に開けられた工房の窓から覗くたびに思うのである。
さて話が冗長すぎたが、プロダクト然とした製品が多すぎる現在のエフェクター業界にて、強いメッセージ性のある作品やモノづくりをこれからも着実に継続しようと思う。ということで、このスイス崇拝3部ストーリーの締めとする笑
次回のEVR Blogは5/8予定です。
Shun Nokina