#2 "フットスイッチ"

Alpha Taiwan社は台湾を拠点とする、総合電子部品メーカーで自分の記憶が正しければ2012,13年頃にギターデバイス用のフットスイッチをリリースすると、一気にエフェクタービルダー界隈で市民権を得た。(Potentiometer : 通称ポットと呼ばれる可変抵抗器などでも非常に高いシェアを得ているが) 

Leqtiqueペダルとしても、リリースされてからすぐにこちらを採用したが、圧倒的なエラー率の低さ(1万個触っても基本的には不良品は0である。。)、耐久性、クリック感の良さなどが当時からずば抜けていた。

このスイッチの原産国は中国だ。20年前とは異なり現在の中国のエフェクター用の電子部品シーンは非常にレベルが高く、マーケット内で最高。と呼べるものも存在する。Alphaのこの黒いスイッチはまさににそんなものの一つなのだ。

ということで、EVR化するにあたりスイッチにアップデートを入れることは非常に困難であった。。。

そんなことをボヤボヤ考えていた2024年12月。EVRのデザインも最終に近い段階で気づくと台湾に来ていた。

台湾という国は紛れもなく世界最高品質の電子部品が量産される凄まじい場所である。自分は15年以上、Taitronicsと呼ばれる電子部品展覧会はもちろん、各会社との打ち合わせに都度通っている。

さて今回の目標地は、台湾南部の台南という都市である。

基本的にエフェクターに使うような電子部品の工場は台北や台中エリアに集中しており、南部まで行くのは久々である。HSRと呼ばれる高速鉄道の快適さはEU人の自分としては信じられないほどである(失礼

なぜ台南まで来たか、それはフットスイッチ(3PDTスイッチ)の発祥と呼ばれる元祖の工場がそこにあるからだ。

1時間ほどの素晴らしいプレゼンテーションを受けているうちに、やはり元祖(オリジナル)の熱量は違うなと感動する。

↑特に現在開発中の新しいスイッチのプロジェクトの進展も。。。(このお話はまたいつか

さてお待ちかねの、フットスイッチの製造現場である。大昔に深圳(中国)にてサクッと見学したことがあるが、今回は全工程に参加させていただいた。今では1から100まで原材料(台湾もしくは日本)の仕入れから、最終完成まで台湾で完結する工場はここだけとのこと。

そもそも熟練の職人の"手捌き"を見れば、あらゆる説明は不要であった。。。

フットスイッチといっても実はこれだけ多くの部品から成立しており、それらが全て手作業で組み立てられる。その一個一個の品質にムラがあると即時クオリティーに影響するため、その管理体制やR&Dのレベルが非常に高い。

特に感動したのがこのマシンである。この会社のみで独自に開発したという、"フットスイッチの端子部分の絶縁レジンの元となるプラスチックのマウンター"である。もはやオートメーションに対する熱量が凄まじい。(というのも、一般的な中国のフットスイッチのレジン部分は一体型で一面に流されることが多いのだが、この会社のフットスイッチのレジンによる絶縁部分は全て独立しており、それがサウンドに影響をもたらすのは容易に想像できる。

もちろん自分でもトライしてみたので是非ご覧あれ....

そんな門外不出のシークレットレジン。アメリカ製とのことで冷蔵庫保管だった。線材の音を決めるのは主に、芯材の品質とその周りの絶縁材の品質だが、スイッチに置き換えると端子部分のメタルの品質と、絶縁材であるレジンやボディーの品質や素材などであろう。

レジンが各端子にマウントされた後は、このオーブンで2時間ほど焼き付けられて完成する。この窯から何億個のフットスイッチが生まれたのだろう。。

それぞれの部品が独立的に製造され、実際の組みつけまで保管される。実際のオーダーが入るとそれらを組み上げて実際のフットスイッチを制作するような格好だ。毎日のように完成品を作りストックしていくようなイメージだったのでちょっとびっくり。

この会社は現在のメインは、フットスイッチではなくその高い技術レベルで船舶などの防水系のスイッチやシステムの一部などだという。どれもこれも自分には??なものばかりだったが、やはり手作業で至極集中して製造している職人に気を取られてしまう。

さて、右はAlpha Taiwan(Leqtiqueの大半がこちらのスイッチです)、左が今回のOriginal Blue 3PDT Footswitchである。

ぱっと見ブラックでシックでプロフェッショナルな見た目のAlphaのスイッチの方がEVRのコンセプトにはマッチしそうなのだが、今回の工場見学で使うべきものがどちらか即断した。

ちなみに、Alpha Taiwanをはじめとした最高レベルのフットスイッチの耐久性が30,000回のアクティベーションなのに対して、こちらのスイッチは50,000回であるのも言うべきもあらず採用理由であった。

EVR製品にはこちらのBlue Switchが現在搭載されているので、是非お持ちのEVRペダルを一度開けて頂き、確認して頂きたい。台湾のマジックがそこにある。

今後は、このOriginal Blue Switchに敬意を表しこんなロゴを入れたフットスイッチをお願いしているところである。(特性などは全て同じ

きっと、2025年3月後半の作品から採用できるのではないだろうか。

2025年の後半にはこちらの会社と現在協力して開発中の、"Silent Switch"(仮)もお目見えすることであろう。。

それではまた次回3/27に!