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通常価格 ¥0 ¥34,980 販売中

 ※11/15- 初回ロットのご納品は2026年1月中旬を予定しております。

 ist : 全てを包括するデバイス 

 Leqtique EVRの全てのデザインを担当している私、Shun Nokinaですが自分のエフェクタービルドとしてのキャリアは、いまからミニペダルでの可能性の追求ということからスタートしました。今から16年前の2009年のこととなります。当時の自分デザインのフラグシップモデル "Redemptionist" をはじめとしていくつかのプロトタイプやリミテッドモデルに"-ist"という言葉を使ってきましたが、この度初心へと立ち返り、ミニペダルをEVR流のデザインとして一から再定義する中で、全てのペダルの拡張的なデバイスとすべき"ist"のコンセプトは具現化されました。

(2025 Leqtique EVR - ist "Lid". Redesigned old SND designs into EVR format. 

 なるべくスペースを圧迫せずに超小型のトータルでコンプリートな、サウンドオーガナイザーを足元に。というのが"ist"の一貫したコンセプトであり、最終的な形として完成したのが、2チャンネルのそれぞれ独立したFull Parametricのトーンコントローラーでした。上下それぞれに、3つの独立したコントローラー群を持ち、それぞれが30(hz)-16k(hz)の可聴可能な全てのバンド幅に対して、±15(db)のBoost/Cut幅を持ちます。またFull-Parametricであるために、それぞれサウンド調整を行いたい中心となる周波数にいかにピンポイント、もしくは近隣も含み広範囲に影響させるかというQ(Quality,Range)コントロールを備えています。

 スイッチが存在していないことから、このデバイスを通している最中は常にON状態となりますが、それぞれ真ん中にある中心周波数(Freq)をコントロールする、大きめの"チキンノブ"の左側にある小さなBoost/Cutコントロールは、12時方向のセンター時においてクリックを備えており、クリックのあるポイントで止めて12時方向とすることで、即座に電気的にイコライジングが無効となり、原音がそのままアウトプットされます。

上記istのセッティング写真において、エフェクターを上下、真ん中で半分に横に分けてご理解ください。上側がChannel 1 、下側がChannel 2となりそれぞれが独立、直列されています。この場合はそれぞれにおいて周波数がセットされていますが、各Boost/Cutコントロールがクリック位置の12時方向となっているため、それぞれが電気的に相殺されバイパスされています。以下に幾つかの想定される使用シチュエーションにおいてさらなる実例を示します。

 こちらは、Redemptionist EVR(aka. RED EVR)の後段にistを繋いで、一体化させトーンコントロールを拡張した実例となります。RED EVRは、強いローミッドーミドルを含む中庸的なOD/DSですが、istの上段のChannel 1のコントロールはハイミッドの強調、また下段のChannel 2のコントロールでは過度なローミッドを少し絞り気味にしたQによってよりピンポイントにカットしています。どちらも、RED EVRのTone,Low-Cutのみでは実現不可能なコントロールとなり、サウンド幅が大きく拡張されます。

 MAR EVRはトラディショナルなTSスタイルのため、ローエンドが元来軽いですがこちらのローエンドをより軽くするためにさらなるカットを(上側Channel 1にて)、またプレゼンス域のHigh-End付近を緩やかに近隣の周波数にも影響するようなQの設定値にて(下段右のミニコントロールが12時よりも半時計方向であるため)ブーストすることで、より"Twangy"なサウンドを演出します。

 もちろん、各ペダルの前段においても威力を発揮します。この場合は前述のMAR EVRのローエンドの軽さを下段のChannel 2にて補いモダンなモディファイ系のTSサウンドをアウトプットするような拡張法です。なお、上段のChannel 1はBoost/Cutを12時方向で無効としているため、実際は下段のCahnnel 2のみ機能させている状態です。なお、Cahnnel 1とChannel 2はそれぞれが完全に相互互換のため、それぞれの設定値を入れ替えても同じトーンのシェイピングとなります。

 こちらの例では、エフェクターボードの入力部分としてアウトボードのプリアンプ/バッファーとして機能させています。それぞれのチャンネルにおいてシェイピングは設定しつつこの実例では、Boost/Cutを共に無効としており良質なバッファーとしてギターサウンドをコンディショニングしてシステムに入力していますが、それぞれのBoost/Cutを微調整することでより能動的にサウンドを調整します。

   

 エフェクターボードのシステムの最後に配置することで、既に完全に完成されたサウンドをローインピーダンスでアンプや次のシステムへと転送するファイナルバッファーとしても活躍します。こちらの例でも一つ前の通り2つの独立したシェイピングを待機させながらこの時点ではバッファーとしてのみ機能させているのがお分かり頂けるかと思います。

 最後にモデリングアンプなどのデジタルデバイスとの併用の実例を示します。この場合は例えばギターを直結している場合、ギターを入れ替えた際に起きるサウンドの違いなどをistによって卓上で即時調整することが可能です。こちらもそれぞれ独立2 Channelに設定値をプリセットしておき、左側二つのBoost/Cutのミニコントロールで調整します。

 他にもこのように、独立4 Channelとするようなクレイジーなアイデアや、当然ギターのみでなくベースには非常に有益であったり(その場合、9-36Vの広い入力オプションを活用頂き、高いヘッドルームにてご使用ください)、あらゆる電子楽器においてサウンドのクリエイティブな拡張が可能と考えます。

 メインサウンドを生み出すようなものでは無く、既に我々のペダル、他社様のペダル問わず、完成されたシステムやサウンドをお持ちの方へ、最後の微調整や、適宜の修正、もしくは広い可変範囲を生かして完全なサウンドの改変。さらに、よりクリエイティブなアイデアを思い描き、使用していただけましたら本機のデザイナーとしてこれ以上の喜びはありません。"エフェクター"をデザインする際に、Mini EQ EVRのページでも書きましたが、常にフィルタリングは必要不可欠なものではありますが、恐れずにいうならばその根幹となるサウンドに抜本的な影響をもたらすことは無いのです。ですが、逆説的に必要不可欠なトーンの外枠のシェイピングを行い、聞き手への印象の半分以上を決定づけてしまうのです。これらがデザイナーの我々のみでなく、そのノウハウが集約された小さなボックス "ist" によりプレイヤーの皆様の手で広く拡張されることを望みます。

 

Control : (Left to Right) : 

Top Layer : Boost/Cut(mini, center detent), Freq , Q(mini)

Bottom Layer : Boost/Cut(mini, center detent), Freq , Q(mini)

Operation Voltage : 9-36V (高い電圧はヘッドルームを拡張し、より歪みの薄いクリーンなブースト/カットとなります。

 

"EVR" コンセプトについて 

  2019年以降はヨーロッパを拠点としていくつかのペダルのデザインには携わらせて来ておりましたが、Leqtiqueのペダルについては新作をリリースすることもなく実質的には休止状態になっておりました。しかしながら、2024年拠点を一時的にアイスランドとしたことで素晴らしいインスピレーションを複数得ることができ、その全てを"EVR"というアップデートパッケージとしてデザインし続けて参りました。

 "EVR"とは、アイスランド語でEVRU:ヨーロッパを意味します。長年、通いや拠点としてヨーロッパ各地で得たインスピレーションや経験をフィードバックして体現していくことを文字に強く込めています。塗装の色彩感や、サウンドのダークさなど元々、強くヨーロッパへの憧れが体現されていたLeqtiqueのペダルですが、より現実的な経験としてはっきり体現されています。

  15年間アップデートの入ることのなかった、Leqtiqueのペダルですが筐体、全てのコンポーネンツ、コンセプトなど一から全て再構成をしました。例えばアルミニウム削り出しの一体型であった筐体は、許容力の広い一般的な"箱"のデザインでしか今まではありませんでしたが、完全にLeqtique EVRのペダルでしか活用できないような特別な設計としてあります。"一体型"であることの優位性を考え直すことで、アルミニウムのみであった素材は、今回アルミニウムの機能的なベースケースと、非磁性のステンレスを使用したコスメティックなレイヤー、また個別で切削されたパーツの3セクションに分割し、統合することで構築されており、"削り出し筐体"のデザイン面での多様性と一貫性、マテリアルチョイスの制限性に逆説的に大きくメスを入れました。結果として、アクリル塗料により塗装されていたケースの大部分はアルミニウムの陽極酸化処理として置き換えられ、今までと比較にならない耐久性を得ることができ、上部レイヤーをステンレス素材をにすることでペダル全体の剛性感は格段に向上し、コスメティックな観点でもステンレスの輝きはハンドペイントに今までには無い奥深い立体感を付与しまいます。また、多軸のCNCマシンでも制作の難しいアイデアについては、個別でパーツを作成し統合することで解決しており、特にチームでは"Slider"と呼んでいる内部の部品は、ペダルコンセプトとは別色で敢えて制作されており、ブランド初期より長らく使用し続けているGavitt製のクロスワイヤーを個別でシールドするのと、Leqtiqueらしいすっきりとした配線を2次元から3次元的に昇華しています。

  他方、電源セクションはペダルの基幹的なデザインの中で間違いなく一番重要なポイントですが、リーディングブランドであるKeystone社の電池スナップを長年活用させていただいておりましたが、最高品位なものが廃盤となり自分としてはこの部分に対して一番頭を抱えておりました.... しかし、EVRコンセプトしてすべてを一から再構築する際に、経年によってワイヤーが切れる可能性のあるスナップではなく、電池自体をセクションとしてマウントしたい。という理想を今回具現化しました。Keystone社の"Model 91"はビンテージタイプから素材やデザインはさほど変わっておらず、9Vの角電池を強力にホールドして強いパワーシグナルをアウトプットするという意味では、個別で設計されたVPTP基板と合わせて、オリジナルLeqtiqueペダルのフォーマットからは遥かに高次元な進化を遂げました。

 こういった全てのアップデートの大半は、"ペダル内部"に関するものが多く、前述の高品位なパーツ群といった話も含めて、実は演奏して実際にペダルを楽しんでいる際には気に留められることがほぼ無い部分なのですが、そこに"なぜ?"という問いも今回のアップデートパッケージの原動力の大きなテーマの一つでありました。自分なりの答えとして、"裏蓋から内部へのアクセスの悪さ"が大きな要因の一つであると考え、裏蓋と固定構造についてもかなり長い時間考察と設計を続けました。最終的に、UKで製造されるカーボンファイバーで強化されたポリアミドの小さなノブ2つで固定することのできる構造へと、トラディショナルな4点プラスねじ止め構造から発展させました。こちらの小さなノブは親指で締めたり、緩めたりが可能なトルク感を持っておりますが、内部にアクセスする機会の少ない場合はスリットが、各国の硬貨やピックの挟まるサイズ感にしてありますのでそちらで増し締めしていただけたらと思います。

  今までで一番ペダル内部に開閉しやすいデザイン。というのが、ペダル内部にひたすら拘り続けた自分からの最終的な回答です。今後のLeqtiqueペダルの新作や、過去作のアップデートには内部トリマーetc...など多く含んで参りますのでこのアップデートは間違いなく大きな意味を持ってくると思います。また、強いメッセージとして"時々ペダルの内部も開けてみてください。間違いなくこのペダルをさらに愛せるでしょう。"というものもあります。世界各地から集められたカスタム品や、シークレットパーツ達それぞれにストーリーがあるのです..... (後記ブログにて詳しく