11/11

11/11

Regular price ¥19,800 Sale

 

  2013年のLeqtique - “9/9”を始点として、モダンハイゲインシリーズを~12/12まで4機種リリースすることを理想として設計を続けて参りましたが、昨年2017年にはよりハイゲインでミッドスクープの強い、メタリックなサウンドの“10/10”を発表し、その後なかなかその2機種を超えるアイデアのないまま、本年2018年を迎えましたが元来の9/9,10/10の当時新機軸のアイデアであった、DMOSFETをベースにしたディスクリート回路による歪みの構築から敢えて脱却し、Rogerで培われたPowerICの多段アイデアをさらに発展させることをアイデアとして今作11/11は生み出されました。

 前2作は、DMOSFETの最大の特徴である非常にタイトなローエンドを持っていましたが、本作11/11ではPowerICらしい真空管ライクな、密度の集約されたローエンドとなっていることが大きな違いの一つであり、その他にもRogerで体感できるギターボリュームに対しての尋常でない、クリーンに落ちるまでのナチュラルな効き方は11/11でも継承されており、Gain=0でもそれなりの激しさを持っているものの、ギターのボリュームを回すだけで太く実用性のある煌びやかなクリーンまで落とすことができます。この特徴によりLeqtiqueの数多くの歪みペダルの中でも群を抜いて、クリーンからウルトラハイゲインまで妥協なくアウトプットすることが可能な万能機種となっています。

 故に、本来10/10の方向性を推し進めてさらにメタリックな音像に仕上げようとしていたイコライジングは大幅に拡張され、Bottomは本来の高密度なローエンドに、味付けの異なるタイトなローエンドをさらに付加するように。また、Edgeと名付けられたコントロールはその名の通り、籠り気味に設定されることの多いLeqtiqueのペダルとは思えないほどエッジーなレベルまで拡張してあります。カット方向にもかなり広げてあるのでイコライジング自体もバーサタイルです。また内部に仕込まれたMid-Cutは50%(12時方向)をデフォルトとしており、ウルトラハイゲインで暑苦しくなりがちな帯域を鋭いQで少し落とし込んだ味付けとしてあります。9/9から続くシリーズのイコライジングの周波数は各モデルで全て異なりますが、今回の味付けではエッジの効き、超太いローエンドを備えた極悪ディストーションという基本キャラクターを最高点として、それぞれのコントロール幅を非常に大きとることでサウンドを甘くし、ギターのボリュームと合わせることで幅広い音楽に対応できるマシンになっている。というのが一番正しい説明だと考えます。Gainはやはり4部作中の3部作目ということで、実用範囲内限界のとてつもないハイゲインまで到達するようになっています。Power IC由来の特徴というべき、Gainを上げるにつれてさらに飽和感が増す様はシリーズ中一番、モダンハイゲインアンプの挙動に近いです。

  凄まじい破壊力を持ちながらも、シリーズ随一のチューブライクな性質を備えた“11/11”ですが、メッセージとして込められた“熾烈な中の本質的な万能性”を感じ取っていただき、自由に様々な音楽の背景で是非、お楽しみ頂けたらと思います。

 

Control : (Left to Right) Volume, Edge(mini), Bottom , Gain, Mid-Cut(inside,50% Default

Operation Voltage : 7V~12V, Current Consumption : Approx 34.0mA

 

 

11/11 Interview

細川 雄一郎/Yuichiro Hosokawa 

https://yhosokawa.myportfolio.com

 

ーNokinaさんにとって、ハイゲイン・ディストーションエフェクターの理想形とは、どのようなものとお考えでしょうか?

 

Shun Nokina(以下 SN):僕がハイゲインなエフェクターを追い始めた頃はまだ選択肢が非常に少なくて、低域がルーズなものが多かったんですね。それに対して、理想はブリッジミュートした際のサウンドがタイトで、雰囲気があることです。

 

ー競合するものとして、ハイゲインアンプのサウンドを意識したことはありますか?

 

SN:高校生の頃からMesa BoogieのDual Rectifireのサウンドをずっと聞いていましたし、海外の楽器のトレードショウでは多くのハイゲインアンプを試して、知ってはいますが、直接的に既存のアンプを意識することはありません。ただし、いくつかのファクターを意識してエフェクターを作ってみると、結果としてDiezelっぽい、こっちはENGLっぽい、といったことになった経験はありました。

 

ー過去に発売された他社製品で、影響を受けたハイゲイン・ディストーションエフェクターはありますか?

 

SN:それは本当に多くあります。ただし、回路として直接的に影響を受けたエフェクターはありません。音色から影響を受けたものでいえば、本当にあり過ぎるくらいありますよ。代表的なものでいえば、BognerのUberchall Pedalですね。

 

ー今回の11/11を含む、9/9から始まるハイゲインシリーズ。数字のみをモデル名にするといった例は過去のエフェクターにはなかったと思いますが、それらモデル名の由来、数字の意味を教えてください。

 

SN:それぞれに意味はあるのですが、それはどうしても12/12の発売まで秘密にさせてください。強いていえば1つだけ、/ (スラッシュ)の前と後ろで意味が違う、ということだけはお伝えできます。

 

 

ーそれは例えば、9/9にある2つの"9"それぞれに別の意味がある、と?

 

SN:その通りです。各モデルのカラーリングにも同様に意味があるのですが、それもこの場ではまだお伝えできません。

 

ーそれらシリーズの序章となった9/9ですが、どのような音を狙い、結果的にどのような回路、機能を内包したエフェクターだったのでしょうか?

 

SN:まず最も意識したのは、最初の質問でもお答えしたブリッジミュートをした際の気持ち良さです。それを実現するための倍音感を作ると、ソロの音も素晴らしいものになるので、結果的にそれら2つを同時に目指していました。回路でいうと、D-MOSFETという素子を使って4段の増幅回路を構成して、最後にアクティブ型のフィルターを配置しています。

 

9/9で初めて使われた素子、D-MOSFETとは、どのような利点、特性を持っていたのでしょうか?

 

SN:バイアス方法によって大きく変わる話であるので、あくまでも僕が使っているバイアス方法や、通常のMOSFETを一般的なバイアスで使った際との比較に限っていうと、D-MOSFETの方がこと細かに動作の設定が可能です。例えば、9/9では4段ある増幅回路それぞれで別の周波数特性を作りやすいということです。

 

ー続いて10/10についても同じく、どのような音で、どのような内容のエフェクターだったのでしょうか?

 

SN:9/9と10/10の歪みを作るセクションはどちらもD-MOSFETを使った回路で、その違いは僅かなのですが、その後にあるイコライジングのセクションは全く違います。9/9のイコライジングはある程度の汎用性を持たせたものだったのに対して、10/10はより重いロー、強いミッドスクープ、激しいトレブルを備えています。

 

9/910/10、歪み量は同じでしょうか?

 

SN:いえ、10/10の方が多いですね。

 

ーそして今作の11/11です。まず、歪み量は前2作よりも多いのでしょうか?

 

SN:はい、11/11の方が多いです。シリーズを追うごとに歪み量は増していきます。ただし、ハウリングの問題を考慮して、ある程度の加減はしています。

 

ーそうでありながら、実際に弾いてみると非常にクリアな高音域が特徴的に聞こえます。この特徴はどのようにして実現しているのでしょうか?

 

SN:過去の9/9、10/10がD-MOSFETを使った4段の増幅回路であったことに対し、今回はPower ICという、同じくLeqtiqueのRogerで使っている増幅素子を使って4段の増幅回路を組んでいます。そのPower ICの性質が出ていることと、11/11ではハイミッドからトレブルにかけてを意識的にチューニングをしているので、そうなったといえます。

 

 

ー増幅回路が4段という点は変えず、増幅する素子を変えたということになるのですね。

 

SN:そうです。もちろん、設計段階では増幅率を調整した6段、8段というような回路も試していますが、4段というのが最もバランスが良いんです。

 

ーボリュームを絞った際の歪み量の落ち方、クリーンサウンドの質感も過去の9/910/10と比べて際立っていると感じます。これはどのようなことが影響しているのでしょうか?

 

SN:9/9、10/10でもボリュームを絞った際のクリーンサウンドはなるべく綺麗なものになるように設計していたのですが、Power ICを使った今回のような回路の場合、それこそRogerで体感された方もいらっしゃるかもしれませんが、異常というレベルでクリーンサウンドが綺麗なんですよ。ちなみに、Power ICを使った歪みエフェクターは少ないながらも存在はしていて、その中で代表的なものがKRANKのDistortion Maximusですが、Power ICを単独で歪ませていないため、ボリュームを下げた際の反応は11/11とは大きく異なりますね

 

ー各コントロール系統についてもお伺いします。Volume、Gainはそれぞれ一般的なものですが、Bottom、Edgeはそれぞれどんなものでしょうか?

 

SN:まず、過去の9/9、10/10では高域をフラットな状態からブーストするようなことはなかったのですが、今回の11/11が持っているEdgeコントローラーでは高域をブーストすることができるようになっているほか、カットする方向の効きも強めています。なぜそうしたかというと、11/11の基本的な素性が素晴らしかったので、より汎用的な範囲でも使って欲しいと思い、より幅広い音作りを可能なコントローラーを装備させました。Bottomもその素性を活かした上で低域を足せるような仕様です。

 

ー内部の基板部に装備されたMid Cutコントローラーはどうでしょうか?

 

SN:9/9、10/10のMid Cutは0(ゼロ=最小値)の位置が一般的な音色だったことに対し、11/11のMid Cutは12時位置が最も一般的な音色になります。それが暑苦しい中域を鋭いQで少しカットしたセッティングですね。そこからロック寄りな音色にしたい場合はMid Cutを反時計回りに、メタル寄りな音色にしたい場合は時計回りに操作して使ってください。

 

 

11/11の回路において、増幅する素子が違うとはいえ、9/9、10/10と同様に4段の増幅回路とアクティブEQ回路から成っているということは解りました。そのほかに前2作と共通する部分、パーツはありますか?

 

SN:まず、9/9と10/10ではアクティブEQ回路に使うOPアンプが異なります。9/9では非常に解像度の高い音質のOPアンプ、LT1498を使っていたことに対して、10/10ではミッドスクープに適した音色を持った別のOPアンプを使っていました。そして今回の11/11では、9/9と同じく解像度を重視したLT1498を使っています。あとはMLCCという種類のコンデンサーが増えていますね。

 

ー基板を見る限り、MLCCは電解コンデンサーの代わりという形で使われているように見えますが、その音色は電解コンデンサーと比べて大きな違いはあるのでしょうか?

 

SN:優劣の差ではありませんが、大きく違います。有極性の電解コンデンサーとMLCCでは、電解コンデンサーの方が低域が暴れるような質感で、MLCCの方がタイトでクリアです。カップリング部分に両者を使って音を比べてみると、電解コンデンサーの方が歪み量も多く聞こえますよ。電解コンデンサーの中でも無極性のものの方がMLCCには近いですね。

 

 

 

ー回路や素子は違えど、音色は前2作と共通して非常にドライに作られていると感じます。これらの音作りは意識的なものでしょうか?

 

SN:非常に意識的なものです。最初にお答えしたハイゲイン・ディストーションの理想形を実現するには、絶対的にドライな音作りになります。

 

 

15.最後に、今後に発売されるであろう12/12は、どのようなエフェクターになるのでしょうか?

 

SN:かつてはシリーズを追うごとにゲインは上がり、逆にツマミの数が減るような、つまり12/12は1ノブのエクストリーム・ハイゲインディストーションとなる極端なプランがありましたが、おそらくは従来のコントローターを備えたマトモなエフェクターになるでしょう。9/9と10/10でD-MOSFET、11/11でPower ICを使って、12/12ではその複合型となるのか。はたまた普通のFETの回路にメスを入れたものになるのか、まだ解りませんが、この2018年の現状ではPower ICを使った今回のアイディアが最良だと思っています。