Beryl

Beryl

通常価格 ¥19,800 販売中

 本作Berylは、トランスペアレント系と称されるオーバードライブのジャンルの本流のスタイルにLeqtique流に挑んだ作品となっています。今までLeqtiqueではRochechouart(2016)にトランスペアレント系のアイデアを用いながらも中域にフォーカスをあてた繊細なオーバードライブを設計しリリースしました。今作は、その時の方向性とは全く異なりそのフォーマットが持つ良さをそのまま我々の感覚で拡張しながら、思われし欠点を解消した上で新たな魅力を付加したトランスペアレント系のOD/DSとなっています。具体的にはトランスペアレント系のエフェクターとしての、従来のようなクリーンブースター,プリアンプ,EQ〜オーバードライブのすべてがマルチに可能という枠組みの強力さをそのままにしながら、軽快なディストーションサウンドをアウトプットできるところまで拡張してあります。

 実際に実現するための設計回路のアイデアとしては、まず第一にトランスペアレント系のエフェクターの素性を完全に引き出すためのシンプルな回路構造と定数設定がベースに存在します。今回はRochechouartの時と異なり、中域のみにフォーカスを当てることなく、後述のように幅広いコントロール幅と慎重に選択された定数設定により、まずは完全なクリーンサウンドからTSスタイルのODサウンドまで演出できるようになっています。さらにその上で、従来のトランスペアレント系のエフェクターではGainコントロールを上げていった際にどうしても魅力的なサウンドを引き出すことが難しく、ではどう拡張しディストーションタイプのサウンドを演出できるようにするかという部分ですが、ここには従来トランスペアレント系エフェクターでは歪みセクションは1段、もう1段はバッファーとして使用されていたいましたが、後段をGainが低いレンジの場合はバッファーとして、Gainを上げていった際にはディストーションタイプのサウンドを付加する新たな歪みセクションとして機能するような可変回路に拡張することで成功しました。

 このような”素性”をBerylは持っているため、Treble-Cut,Low-Cut,Gainを0にし、Volumeを可変することで完全なクリーンブースターをこなすところから始まり、ほんの少しGainを上げることでクリーンサウンドのまま相当可変域の広いVolumeを備えていることがわかります。また、Treble-Cut,Low-Cutに関してもLeqtiqueの他エフェクターと比較しても非常に広い可変域でありながらも、定数設定の妙でシンプルなLowPass/HighPassフィルターとは異なる操作感に拘りました。具体的な例としてはTreble-Cut,Low-Cutともに50%としてGainを40%までの間でお好みのポジションにすることで、Berylの持ち味である解像度の高く繊細、また恐るべき魅力を秘めた未知のLT1213の心臓部,Vintage Diode/Secret Green LEDのコンビネーションクリップ由来であるスムースな密度の濃いTSスタイルのサウンドをアウトプットします。特筆すべき、Gainコントロールは上述の特殊な回路設計により、50%付近より表情が変わりそれより先の領域ではディストーションサウンドのような豊かなサステインと、本来の持ち味である凛としながら、また同時に非常に艶のある倍音感を備えます。

 大幅にトランスペアレント系エフェクターの概念を拡張した、このエフェクターはカバーできる範囲がLeqtique史上明らかに一番広く、セッションなどにおいて一台あればあらゆる仕事をこなしてくれることはもちろん、元来トランスペアレント系エフェクターのボイシングの難しさであった、”独自のサウンドを備えているか?”という問いにも完全な回答があり、高解像度で凛としながらも、密度が濃く散漫にならないサウンドは、ローゲイン/ハイゲインどちらにおいてもカッティング、ソロイング双方で生きてきます。是非、今までのLeqtiqueエフェクターではサウンドさせることのできなかった幾つもの音色をBerylでお楽しみください。

 

Control : (Left to Right) Volume, Low-Cut(mini), Treble-Cut, Gain

Operation Voltage : 7~18V, Current Consumption : Approx 6.1mA

 

 

Beryl Interview

細川 雄一郎/Yuichiro Hosokawa 

https://yhosokawa.myportfolio.com

 

--まず最初に、モデル名である"Beryl(ベリル)"とは、一体どのような意味なのでしょうか?

 

--Shun Nokina(以下 SN):"ベリリウム"っていう4番目の元素がありますよね?それは緑柱石という鉱物から取れる元素なのですが、宝石のエメラルドもその緑柱石の一種で、その緑柱石をラテン語でBerylと呼んだそうです。今回、エメラルドグリーンのカラーを持ったエフェクターを作りたかったので、Berylという名前にしました。

 

--つまり、色ありきで始まったプロダクトだったということでしょうか?

 

SN:そうですね。

 

--数ある色の中でなぜ、エメラルドグリーンを選んだのでしょうか?

 

SN:ここ札幌に引っ越してきてからの第1作目ということで、小樽の北一硝子、そして神威岬の積丹ブルーと称される海の色に強いインスピレーションを受けています。実は、Leqtiqueの第1作目であるMaestro Antique Revisedも北一硝子の流氷シリーズからインスピレーションを受けているんですよ。

 

--Berylはどのカテゴリーに属するエフェクターなのでしょうか?

 

SN:僕としては"オーバードライブ/ディストーション"と明確に言えると思っています。歪みの強いMaestoroでもハード・オーバードライブ、オーバードライブ/ディストーションのような使い方もできるRedemptionistも結局はディストーションとしての特徴が強い。しかし、このBerylに関しては完全に"オーバードライブ/ディストーション"と呼べるはずです。

 

--オーバードライブとディストーションが完全に切り換えられるということでしょうか?

 

SN:そうです。しかし、その二つが連続的に、非常にスムースに変えられるので、その境目に気づかない人もいるかもしれません。

 

--コントロール系統が4つありますが、それぞれ何を表していますか?

 

SN:Volume、Gain、Low Cut、Treble Cutの4つになります。トーンコントローラーは全てカット方向に作用しますが、これはBerylがまずトランスペアレント系のエフェクターとして設計が始まったことに起因します(注:トランスペアレント系のエフェクターのEQはカット方向のパッシブタイプが多い)。トランスペアレント系としてはすでにRochechouartを設計していましたが、その音色は同カテゴリーの中で特異的でしたので、今回はそれこそ宝石のエメラルドのような、透明感のある本流のトランスペアレント系を目指して設計を始め、そうであればTimmyなどのようにカット方向のEQの方が解りやすいと思い、その特徴は最後まで残しました。

 

--そもそも、Nokinaさんが考えるトランスペアレント系の定義とは、どんなことでしょうか?

 

SN:回路の構造で言えば、歪みを作る初段がそれこそTube Scremearのように負帰還にダイオードがある回路で、パッシブのEQを採用していれば、それはトランスペアレント系の要素として僕は捉えています。加えて、入出力にバッファー回路がない。音色のことでいうと、ゲインを大きく下げて、各パッシブEQを最小値にすることで原音とほぼ変わらない音が出ること。それがトランスペアレント系の大きな特徴だと考えています。

 

--このBerylの回路はトランスペアレント系に近いのでしょうか?

 

SN:オーバードライブの領域で使う際には、トランスペアレント系の回路に近いものとなっています。しかし、ディストーションの領域ではわずかに違う回路となっています。

 

--ディストーションだけが違う、というのはどういうことなのでしょうか?

 

SN:一般的なエフェクターのゲインコントローラーと言えば、殆どは歪み回路の1段分だけの増幅量を操作していると思いますが、このBerylではデュアルポットを使用し、1つのコントローラーで2段分の歪み回路を操作しているのです。1段目はオーバードライブ回路として機能し、2段目はゲインを下げている際にはバッファーのような作用をしますが、ゲインを上げることでディストーションの回路として作用するようになります。具体的には、ゲインコントローラーに12時以降からバッファー回路がディストーション回路へ変わり、歪みの量、コンプ感が増していきます。

 

 

--具体的にそれはどのような構造、回路になっているのでしょうか?もちろん、答えられる範囲で結構です。

 

SN:1段目はクリップするポイントが低い秘密のダイオードで歪みを作っていて、この点は一般的なトランスペアレント系とは逆のアプローチですね。クリップするポイントが低いと音量が稼げないので、ブースターとしての用途も見込めるトランスペアレント系は採用しないわけですが、このBerylは2段目がバッファー、実際はクリップするスレッショルドの高い増幅段と言った方が正しいのですが、それがバッファー的に機能しているので十分な音量を稼げます。そして、ゲインを上げていくとその2段目が歪みとして動作するようにできているのです。

 

--1段目の歪みは一般的なオーバードライブと同じようにデュアルオペアンプの片側の負帰還にダイオードを配した回路で、そのあとにオペアンプのもう片側でクリッピングのスレッショルドが異なる2段目を構成している....と?

 

SN:その通りです。1段目と2段目で異なるダイオードを使ってクリッピングさせています。2段目に採用したクリッピング用のダイオードはBerylのカラーにちなんだエメラルドグリーン色のシークレットLEDで、一般的な赤色のLEDよりもクリップし始める電圧が高いんです。1段目に採用したシリコンダイオードが±0.6Vぐらいですから、1段目のシリコンダイオードでクリッピングした波形は±0.6Vぐらいの大きさに制限されているので、LEDがクリップするレベルには到底届かない。ところが、2段目もゲインを上げれば増幅され、LEDのスレッショルド電圧に届いたところで緑色のLEDで起こるクリッピングとブレンドされディストーションタイプのサウンドとなり、このポイントをゲインコントローラーの12時前後に設計したのです。

 

 

--その2段分の増幅回路それぞれの増幅量をデュアルポットで同時にコントロールしている、ということでしょうか?

 

SN:そうです。設計初期はもっとエゲツないことやってましたけどね(笑)。

 

--それでもすごくユニークな回路になりましたね。

 

SN:トランスペアレント系のエフェクターにおいて、こと僕が改良したいと思っていた点は2つあって、まず1つは低域のトーンコントローラーを下げたとしても常に音色がルーズでボワボワしてしまうこと。このBerylではオペアンプの選択と回路の定数設定によってその問題点をクリアしていて、完全にフルフラットなレンジを作ることもできますが、それでも音色はタイトに仕上げています。そしてもう1つの改良すべき点はゲインを上げていった際に音が破綻しがちであること。その問題を解消するため、今回のような回路に至りました。

 

--実際に弾いてみると、Bass Cut、Treble Cutの効く範囲が非常に広いと感じました。そこにはどんな意図があったのでしょうか?

 

SN:先にも言った通り、トランスペアレント系のエフェクターでは各EQを最小の値にした際に原音と同じ音が出なければならない。その状態を完全に保っているので、各EQコントローラーの最小値では非常にトレブリー、ベーシィになっていると思います。そこからカットする方向にEQが効いていきますが、Low Cutはバッサリ切れるわけではないにせよ、TS系の音色から少し進んだ程度まで低域をカットすることができ、その可変の仕方にこだわっています。Treble Cutに関しては幅広いように感じるかもしれませんが、他のトランスペアレント系と比べて効きが特に強いというわけではありません。あくまでも実用的な値を狙っています。原音と同じレンジ感を作るためにEQが効かない領域がある分、広く感じるようには思います。

 

--ダイオードやオペアンプの話が出ましたので、次は各コンポーネントの話に移りたいのですが、まず心臓部となるであろうオペアンプ。今回のBerylでもやはり重要な部分ですか?

 

SN:間違いなく心臓部ですね。Liner Technolgy社(以降、LT社)のLT1213を採用しています。

 

 

--どういった特性を持つオペアンプなのでしょうか?

 

SN:エフェクター業界では誰もLT社のICに深い興味を持ってくれないので、結果として僕だけがLT社のマニアのようになってしまっていますが(笑)、まず同社のオペアンプは大体が凛とした音色、リファレンスライクな音色、立体感があるとも散漫とも言えるかもしれませんが、繊細で高解像度の音色です。しかし、今回はその中でもNational Semiconductor社のLM1458のような、ギュッと身の詰まった音色のものを採用しようと決めていました。そこでLT社からスペック上で使えそうなオペアンプの全てを買ってみて、行き着いたのがこのLT1213でした。

 

--LT1213は主にどのような用途に向けて作られたものなのでしょうか?

 

SN:ごく一般的なオペアンプです。設計は少し古めのもので、解りやすく例えれば、4558から乗り換えられる少しスペックの高いもの、等価回路は明らかにされていませんが、Burr Brwon社のOPA2134のような感覚で捉えても大きな違いはないはずです。

 

--その他のオペアンプと比べて、どのような音色なのでしょうか?

 

SN:LT社のオペアンプといえば、そのほとんどが一般的に高解像度と言われているOPA2134と比べても次元が違うほど解像度が高く、クリアなサウンドなのですが、繊細過ぎて華奢なサウンドであることが多いことも事実です。しかし、LT1213はLT社ならではの解像度の高さ、タッチレスポンスの良さはありながらもミドルに集約したような音色が得られたのです。

 

--ギターエフェクターのような質感である、と。

 

SN:まさしくその通りです。それが素晴らしいと思って採用しましたね。

 

--次に固定抵抗を見てみましょう。Leqtiqueとしてはいつも通りですが、PRP社のオーディオ用金属皮膜抵抗と、古き良きカーボンコンポジション抵抗が使われていますね。このカーボンコンポジション抵抗はAllen Bradley社のものですか?

 

SN:いえ、違います。どうしてもAllen Bradleyの解像度にフォーカスしなければならないような時でなければ、例えヴィンテージ品が手に入ったとしても現行品の中から選ぶようにしています。コンデンサーなどの他のコンポーネントもそうですね。

 

--このカーボンコンポジション抵抗の部分がいわゆる音色に直接関係のある部分ということで良かったでしょうか?

 

SN:そうですね。そして、それ以外はPRP社の抵抗です。そういった基本理念はもう崩れることはなく、特に今回は一般的な増幅回路からなる歪みエフェクターですので、オペアンプ以外は今までのセオリー通り、いつも通りのLeqtiqueレシピとも言えますね。今回の回路では定数設定こそが重要で、定数次第で全く別のエフェクターに変わります。例えば、RochechouartもBerylと同じくトランスペアレント系を目指したエフェクターで、回路構成も似ていますが、音は全く別物ですね。この二つは是非、皆さんに比較して欲しいと思っています。

 

--オペアンプやクリッピングダイオードの違いには解りやすい効果、結果が得られると思うのですが、他のコンデンサーなどのコンポーネントにこだわると、どのような良い結果を得られるとお考えでしょうか?

 

SN:例えば、コンデンサーに関しては音の劣化を抑えるということが言えると思います。Berylの基板を見てもらっても解ると思うのですが、音に対して直列に繋がるような箇所にはEROのMKT1813やMalloryの150を使っています。アキシャルのコンデンサーというのは基本的に音が良いものが多いのですが、この二つは特にコストと音のバランスが優れています。

 

 

--最後に、音色に関して、最もこだわった点はどういったことでしょうか?

 

SN:ゲインを12時方向よりも上げることでオーバードライブからディストーションに変化するのですが、それ以前のオーバードライブでの領域ではTS系の音色を意識していて、その音色を洗練して、鮮明でモダンなTS系サウンドを得られるように作っています。Bass Cut、Treble Cutは12時方向にすることで特に解りやすくその特徴が出ると思います。

 

--なぜ、そういった狙いを持ったのでしょうか?

 

SN:僕が作るエフェクターといえば、ハイファイ・オペアンプを使った立体的な音であったり、僕の好みでローミッドの帯域に寄せたものが多かったと思うのですが、今回は初めてミドル、ハイミッドを意識しています。結果としてプレーン弦をチョーキングした際にツヤのあるサスティンを得られるようになっています。

 

--ちなみに、9Vでの駆動のみでしょうか?

 

SN:いえ、18Vまで大丈夫です。高電圧ではオペアンプの性質もあり、よりクリアな音色になると思うので、ミドルレンジが濃すぎる、といった場合には有効だと思います。